【事後アンケートに頂いた質問の転記】
フルカバーとパーシャルカバーの違いやそれぞれの適応症例を教えていただきたいです。
ご質問ありがとうございます。
フルカバ―の適応は、膵癌などによる中下部胆管狭窄です。plastic stentより開存期間が長く、腫瘍のingrowthはなく、ステント閉塞を起こした場合、抜去して留置し直すことも可能です。ただし、膵癌のneoadjuvant療法中の胆管ドレナージにおいて、カバーとアンカバーの有効性を比較した論文で、有害事象の種類に差はあるものの、有効性は同等であった(Gastrointest Endosco. 2019; 90(4): 602-612)という報告もあり、カバーにするかアンカバーにするかは、術者の好みもあると思います。
フルカバ―の欠点として、自然脱落や、胆嚢管にかかると胆嚢炎になる危険性があることがあげられます。その欠点を解消したのがパーシャルカバーであり、自然脱落することはなく、胆嚢管にかかっても、カバーされていないところがあたっていれば、胆嚢炎になる可能性は下がると思います。ただ、後から抜去するのはやや危険かもしれません。
フルカバ―とアンカバーの良いとこ取りを目指したのがパーシャルカバーだと思います。適応としてはフルカバ―とあまり差はないと思われますが、個人的にはあまり使用していないため、術者がステントを留置する際になぜそのステントにしたのか、聞いてみると良いかもしれません。
ご参考にしていただければと思います。
木曽病院 小澤真希子
質問頂きありがとうございます.
フルカバーメタリックステント(FC-SEMS)とパーシャルカバーメタリックステント(PC-SEMS)の違いについて,ほぼほぼ私見になりますが述べさせて頂きます.
小澤先生も述べられていますが,FC-SEMSのメリットはアンカバーメタリックステント(UC-SEMS)と比べて,ステントのメッシュ間が特殊な膜で覆われているため,腫瘍のin-growthの可能性が低いことと,またステント自体を抜去可能なことです.UC-SEMSと比べた際のデメリットはステントの逸脱があること,胆嚢炎を起こしやすいことです.PC-SEMSはFC-SEMSと比べ,ステントの両サイドに少しアンカバー部分があるため,その部位に胆管上皮が入り込みステントが固定されることによって逸脱のリスクが低くなると考えられます.それならFC-SEMSではなく,PC-SEMSを使えばいいのではないかということになりますが,ステントを抜去することを考えると,PC-SEMSでは上皮によって少しステントが固定されており,無理に引っ張ると上皮が剥がれ大出血!?なんてことも危惧されます.ステントトラブルの際には抜去→新品に交換!と考えている先生はFC-SEMSの方が使い勝手がいい気がします.
最終的には施行医の好みになりますが,考え方の1つとして少しでもお役に立てれば幸いです.
飯山日赤 渡邉貴之